2024年4月に実施された診療報酬改定は、医療機関の経営に大きな影響を与えています。特に外来診療を中心とするクリニックにとっては、収益構造の見直しが急務となっています。本記事では、今回の改定のポイントと、クリニック経営者が取るべき具体的な対策について詳しく解説します。

目次

  1. 2024年診療報酬改定の概要
  2. クリニックへの主な影響
  3. 収益への影響シミュレーション
  4. 経営改善のための5つの対策
  5. 成功事例の紹介
  6. まとめと今後の展望

1. 2024年診療報酬改定の概要

2024年の診療報酬改定は、「医療DXの推進」「地域医療の充実」「働き方改革への対応」の3つを主要テーマとして実施されました。

改定率について

今回の改定では、診療報酬本体がプラス0.88%、薬価等がマイナス1.00%となり、全体ではマイナス0.12%の改定となりました。

主な改定内容

  • 初診料・再診料の見直し
  • オンライン診療の評価拡充
  • 地域包括診療料の要件緩和
  • 医療DX推進体制整備加算の新設

2. クリニックへの主な影響

今回の改定により、多くのクリニックで以下のような影響が生じています。

プラスの影響

  • オンライン診療の収益性向上
    情報通信機器を用いた診療の点数が引き上げられ、導入メリットが拡大しました。
  • かかりつけ医機能の評価
    地域包括診療料の算定要件が緩和され、より多くのクリニックが算定可能になりました。
  • 医療DX推進の支援
    電子カルテ導入等に対する加算が新設されました。

マイナスの影響

  • 特定疾患療養管理料の見直し
    算定要件が厳格化され、従来通りの算定が困難になるケースが増加しています。
  • 長期処方の制限
    リフィル処方箋の導入により、受診頻度が減少する可能性があります。

3. 収益への影響シミュレーション

具体的な収益への影響を、モデルケースを用いてシミュレーションしました。

内科クリニック(1日平均外来患者数50人)の場合

項目 改定前 改定後 差額
月間診療報酬 8,500,000円 8,415,000円 -85,000円
年間影響額 - - -1,020,000円

このように、何も対策を取らない場合、年間で約100万円の減収となる可能性があります。

4. 経営改善のための5つの対策

診療報酬改定への対応として、以下の5つの対策を推奨します。

1

オンライン診療の導入・拡充

評価が引き上げられたオンライン診療を積極的に活用し、新たな患者層の開拓と業務効率化を図ります。

  • 導入コスト:初期費用30-50万円
  • 期待効果:月間20-30万円の増収
  • ROI:6-8ヶ月で回収可能
2

地域包括診療料の算定

要件が緩和された地域包括診療料を算定することで、安定的な収益確保を目指します。

  • 必要な体制:24時間対応体制の構築
  • 期待効果:患者1人あたり月1,560点
  • 対象患者の拡大施策が重要
3

医療DXの推進

電子カルテの導入・更新により、医療DX推進体制整備加算を算定します。

  • 加算点数:月1回8点
  • 業務効率化による人件費削減
  • 患者満足度の向上
4

予防医療・自費診療の強化

診療報酬に依存しない収益源を確保することで、経営の安定化を図ります。

  • 健診・ドックの拡充
  • 予防接種の積極的実施
  • 美容・アンチエイジング分野への参入
5

業務効率化とコスト削減

AIやICTを活用した業務効率化により、人件費を抑制しながらサービス品質を向上させます。

  • AI問診システムの導入
  • 予約システムの最適化
  • 在庫管理の効率化

5. 成功事例の紹介

実際に診療報酬改定に対応し、成功を収めているクリニックの事例を紹介します。

事例1:A内科クリニック(大阪市)

取り組み内容

  • オンライン診療を全面導入
  • AI問診システムで業務効率化
  • 健診事業を拡充

成果

  • 月間収益:前年比108%
  • 新規患者数:30%増加
  • スタッフの残業時間:50%削減

事例2:B整形外科クリニック(堺市)

取り組み内容

  • リハビリテーション部門の強化
  • 運動器リハビリテーション料の適正化
  • 理学療法士の増員

成果

  • リハビリ収益:150%増加
  • 患者満足度:大幅向上
  • 地域での評判向上

6. まとめと今後の展望

2024年の診療報酬改定は、クリニック経営に大きな転換点をもたらしています。単に診療報酬の変化に対応するだけでなく、これを機会として捉え、経営革新を進めることが重要です。

成功のポイント

  1. 早期の対応:改定内容を正確に理解し、速やかに対策を実行
  2. 複合的アプローチ:単一の対策ではなく、複数の施策を組み合わせる
  3. 継続的な改善:PDCAサイクルを回し、常に最適化を図る
  4. 専門家の活用:医療経営コンサルタントや税理士と連携

今後も医療制度改革は続いていきます。2025年には「地域医療構想」の実現に向けた動きが本格化し、2026年には次回の診療報酬改定が控えています。

税理士法人 辻総合会計では、こうした制度変更に対応し、持続可能な医療経営を実現するためのサポートを提供しています。診療報酬改定への対応でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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辻 光明

著者プロフィール

辻 光明(つじ みつあき)

税理士法人 辻総合会計 代表。公認会計士・税理士。
1990年代から医療機関の経営支援に携わり、これまでに300以上のクリニック開業・経営改善を支援。診療報酬改定への対応や医療DX推進のエキスパートとして、全国の医療機関をサポートしている。