アルバイトでの年収で103万円以下なら多くの場合、年末調整は不要です。一方で、一定の条件を満たす場合には所得税の精算手続きが必要なケースもあります。本記事では、その具体的な条件や注意点について解説します。
アルバイトでも知っておきたい年末調整の基礎知識【103万がポイント】
アルバイトの収入で103万円以下の場合、基本的に年末調整が不要です。理由は、所得税が発生しない点にあります。ここでは、以下2点について解説します。
- アルバイト収入103万円以下で年末調整が必要な理由
- アルバイト収入103万円以下で年末調整をしない場合のリスク
アルバイトでも年末調整が必要になるケースもあるため、しない場合のリスクについても紹介します。
アルバイト収入103万円以下で年末調整が必要な理由
年収103万円以下の場合、所得税は発生しないため、通常は年末調整が不要です。しかし、一定の条件を満たすと年末調整が必要になる場合があります。
例えば「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下、扶養控除申告書)を提出している、年間で1度でも月給88,000円以上で源泉徴収されているなどです。一度でも源泉徴収が発生すれば、所得税の過不足が発生するため、精算手続きが求められます。
アルバイト収入103万円以下で年末調整をしない場合のリスク
年末調整を行わない場合のリスクは、正しく所得税が計算されない可能性がある点です。特に月額88,000円以上で源泉徴収が発生している場合、精算手続きをしなければ余分に所得税を納めることになり、還付を受ける機会を逃してしまいます。
また、掛け持ちで複数のアルバイト先がある場合は、どの収入が対象になるかしっかり把握し、必要な手続きを行わないと損をするリスクが高まります。
103万超えたらどうなる【対象期間はいつからいつまで】
所得税が課税されるのは、年収が103万円を超えたときです。この場合、所得税の精算が必須となり、さらに確定申告が必要になる場合もあります。
対象期間は基本的に1月1日から12月31日までで、本年であれば2024年1月1日から同年12月31日までに支給された給与が対象です。しかし、勤務形態や収入状況によって詳細が異なるため、しっかりと確認しておきましょう。
アルバイト収入103万円以下で年末調整が必要な場合と不要な場合の違い
アルバイト年収が103万円以下なら、だれでも年末調整が不要になる訳ではありません。ここでは、以下2点を中心に紹介します。
- 103万円以下で年末調整が必要なケース
- 103万円以下で年末調整が不要なケース
-
アルバイトの場合、複数のアルバイト先で勤務している可能性があるため、違いを知ることが正しい申告につながります。
103万円以下で年末調整が必要なケース
年収が103万円以下でも、以下の条件に該当する場合は年末調整が必要です。具体的には、扶養控除申告書を提出し、源泉徴収が行われている場合や、年間で一度でも月収が88,000円以上となった場合が該当します。
これらのケースでは、余分に徴収された税金を還付するために年末調整を行います。
103万円以下で年末調整が不要なケース
年収103万円以下で、源泉徴収が一切行われていない場合は、年末調整は不要です。また、複数のアルバイトを掛け持ちしている場合でも、全ての収入が103万円以下であれば、年末調整を行う必要はありません。
ただし、複数あるアルバイト先の1か所で申告書を提出しない限り、源泉徴収が行われないため、自己申告が重要です。
源泉徴収とは給与支払者が受給者から所得税を預かって納付すること
源泉徴収とは、給与支払い時に受給者の所得税をあらかじめ差し引き、雇用主が国に納付する制度です。給与所得者は、毎月の所得税を前払いするイメージになります。
年末調整は、前払いしている源泉徴収の過不足を調整するための手続きです。
アルバイト収入103万でも年末調整を忘れた場合の対応方法
アルバイトとして働いていると、年末調整を忘れてしまうこともあります。特に収入が103万円以下であっても、条件によって年末調整が必要です。ここでは、以下2点を中心に説明します。
- 年末調整を忘れた場合に取るべき手続き
- 過剰に徴収された所得税を取り戻すための方法【還付金申請】
アルバイト収入の場合、多くの場合は年末調整で還付になるため、あわせて解説します。
年末調整を忘れた場合に取るべき手続き
年末調整を忘れた場合、まずアルバイト先に早急に連絡し、書類を提出できるか確認します。まだ手続きを完了していないのであれば、お願いすることが最適です。
もしアルバイト先の年末調整手続きが終了してしまっている場合でも、まだ救済措置があり、確定申告を行うことで還付金を受領できます。確定申告は、翌年の2月17日から3月17日※までの間に行う必要があります。
※2025年2月16日が日曜日、3月15日が土曜日にあたるため
参考:申告と納税|国税庁
過剰に徴収された所得税を取り戻すための方法【還付金申請】
年末調整を行わなかった結果、過剰に所得税が徴収されている場合、還付金申請を行うことで余分に納付している所得税の還付が受けられます。
年末調整を忘れた場合、還付金の申請には、確定申告が必要です。確定申告書に必要事項を記入し、アルバイト先から発行された源泉徴収票を添付して提出します。源泉徴収票があれば、すでに納付している所得税額がわかるため、源泉徴収された税金のうち、払いすぎた分の還付が受けられます。
年末調整と確定申告の関係
年末調整と確定申告は、所得税の精算を目的とした手続きですが、内容は異なります。年末調整は基本的に雇用主が行う手続きであり、確定申告は個人が税務署に対して行うものです。
アルバイトで年収103万円以下であっても、年末調整を忘れてしまった場合や、複数の雇用先から給与を受け取っている場合には、場合によって確定申告が求められます。自分の収入状況に応じて、どちらの手続きを行うべきか事前に確認しておくことが必要です。
源泉徴収票と年末調整の関係
源泉徴収票は、アルバイト先が従業員に対して発行する書類で、年間の給与や源泉徴収された所得税額が記載されています。年末調整が必要な場合、源泉徴収票を基に税金の精算が必要です。ここでは、以下2点について説明します。
- 103万円以下の収入で源泉徴収票が発行されるケース
- 源泉徴収票が発行された場合の対応方法
103万円以下の収入で源泉徴収票が発行されるケース
年収が103万円以下でも、源泉徴収票が発行されるケースがありは、扶養控除申告書を提出している場合、年内に月収が88,000円以上になり、源泉徴収が行われた場合です。この場合、発行された源泉徴収票を基に年末調整や確定申告を行う必要があります。
扶養控除申告書を提出している場合、月額88,000円以上89,000円未満の給与を受け取っていれば、扶養が無い場合でも130円の源泉徴収がされています。(社会保険料は考慮せず)
源泉徴収票が発行された場合の対応方法
源泉徴収票が発行された場合、それを基に正確に税金の精算が必要です。まず、年末調整を受けていない場合は、確定申告を行います。特に掛け持ちで収入を得ている場合は、源泉徴収票の内容を正確に確認し、必要に応じて手続きを進めることが大切です。
アルバイト収入103万円以下でも知っておくべき控除と注意点
アルバイトで年収103万円以下でも、控除を受けるための要件や税金に関わる注意点があります。そこで、以下3点を中心に説明します。
- 扶養控除と年末調整の関係
- 勤労学生控除の適用条件と注意点親の税金との関係【稼ぎすぎると親の扶養から外れる】
扶養控除や勤労学生控除、親の扶養から外れるリスクなど正しく理解しておくことは、アルバイトをする上でも必要な情報です。
扶養控除と年末調整の関係
扶養控除は、家族を扶養している場合に所得税を軽減する制度です。例えば、親に扶養されている学生アルバイトを例に考えてみましょう。
アルバイトの年収が103万円以下なら、通常、親は扶養控除が適用され、所得税の負担が軽減されます。本人も所得税の負担はありません。ただし、扶養控除の適用には、年末調整時に「扶養控除等申告書」の提出が必要です。提出を怠ると、年末調整時に適切な控除が受けられなくなります。
勤労学生控除の適用条件と注意点
学生でアルバイトをしている場合、「勤労学生控除」を適用できる可能性があります。勤労学生控除は、一定の条件を満たせば、所得税の負担が軽減される制度です。
年収が103万円を超えても、勤労学生控除が適用されれば、税金の負担が軽減されます。適用条件として、それ以外の収入が少ないことや、特定の学業に専念していることが求められるため、条件に該当するか事前の確認が必要です。
親の税金との関係【稼ぎすぎると親の扶養から外れる】
年収が103万円を超えると、親の扶養から外れる可能性があります。親が扶養控除を受けている場合、扶養家族の年収が103万円を超えると、この控除が受けられなくなり、親の税負担が増加します。アルバイトで収入を増やしたい気持ちは抑えつつ、収入が増えすぎないよう税金も意識しておくことが必要です。
扶養とは収入が少ない(無い)親族を援助すること
扶養とは、収入が少ない、あるいは収入が無い親族を経済的に支援することです。税制上、扶養されている親族に対しては控除が適用され、所得税の負担が軽減されます。しかし、扶養されている側の収入が一定額を超えると、扶養控除が適用されなくなるため、収入を管理することが重要です。
アルバイト収入103万以下でも年末調整が必要なときがある
基本的にアルバイトの年収が103万円以下の人は、年末調整を行う必要はありません。しかし、一定の条件に該当する場合は、年末調整が必要です。特に、源泉徴収された場合や扶養控除等申告書を提出している場合は注意が求められます。自分の収入状況を正確に把握し、必要な手続きを忘れずに行うことで、税金に関わるトラブル防止につながります。
アルバイトの年末調整について、詳しく知りたい方は当事務所へお気軽にご相談ください。扶養控除の定期用範囲について経験豊富な当職員が、わかりやすく説明します。
